嘉津宇のユレーヤー                  トップヘ


2011年8月26日(金)メモ

 本部町嘉津宇に「刺繍」をほどこされた服がある。『沖縄県国頭郡志』(大正8年)で紹介されている。その後、『服飾の研究』などで紹介されている。『沖縄県国頭郡志』の以下の文面を手掛かりに検討してみることにする。

 その前に、これまで『沖縄県国頭郡志』(大正8年)で紹介されている遺物や旧家などがどうなっているか、その確認をしておく必要があることから、その調査を進めてきた。嘉津宇の服や布片などの確認もその一つである。その現物の着物を見学する機会があった。服や模様や刺繍などについて全くの素人なので触れることはできない。

 首里王府から献上された山原の旧家が持っている(いた)情報を掲げてみる(他の資料については別稿でまとめることにする)。基本的に衣類や布地は首里王府からの献上物である。ただ、伝承では北山の滅亡との関係で捉えられているのが目につく。他の地域に残る古い衣装類はどうだろうか。

・国頭村奥間座安家(アガリー)
  尚円王より拝領の伝承:黄冠・水色の絹衣黄色絹帯地及黄金カブの簪

・国頭村辺戸の佐久真家  
  70年前(大正8年から)まで王の衣冠宝物保存

・本部村(町)並里(満名)上の殿内
  按司位牌三個、古櫃の中に古刀三振、衣類二枚(一つは絹地、一枚は更紗)繻子の古帯一筋、
  羽二重の襦袢一枚を秘蔵(中昔北山城主滅亡の際王族が隠遁せるのか)

・花の真牛(本部町伊野波)
 真牛、乙樽同様その年代や素性は定かにあるず。王妃となる才媛なり。城内では花の真牛が絢爛
 なる七つ重ねの礼服
をする。


・久志村(現東村)川田(根謝銘屋)
  同家には絹地の衣類、古刀、黄金のかぶの簪

・大宜味村田港(根謝銘屋)
  田港の根差目屋(本家)に絹衣数種、黄金カブの簪一個(秘蔵)。

・大宜味間切根差部親方
  ・・・其の衣類は根謝銘大城某の宅に保存せり。
  
・国頭村字安田(屋号:川口)
  仲今帰仁城主の一族の伝承あり。黄金の男差簪、古い短刀一振。古文書(辞令書)

・名護間切名護村長寿大城
  尚敬王34年次良大城101歳に黄冠を賜い、絲綿一把綿布二端を賞与される。

・金武村(現在町)金武宜野座及び安次富家
  両氏は歴史上の人物阿波連親方の後胤なりしの伝承。宝石絹服等を秘蔵。

・今帰仁阿応理屋恵按司家(阿応理恵御殿)(所蔵目録)
  ・冠玉たれ一通 ・同玉の緒一連 ・王の胸当一連 ・王の御草履一組 ・玉かわら ・同玉かわら
   一大形 ・二十二小型水晶の玉百十六。



【本部町嘉津宇仲村渠家:ユレー家】

 同家にも前記並里家の如く上座に按司位牌二個を祀り霊前床上に古櫃一個ありて左の遺物を納めたり。
 一、絹の琉服一着(水色の七子地に花模様の古代刺繍あり)
 一、八巻用サージ二筋(金襴にして梅花模様あり長各一尋)
 一、布片二種(水色絹地及黄色絹地に孔雀、鳳凰等の巧妙なる古代刺繍あり)

 同家の口碑に依れば阿応理恵按司の礼服なりしという。又北山滅亡の際貴族此家に隠遁して世を避けたりとも伝う。然るに右遺物の保存せらるる外何等の記録なく従って其の人物の当家との関係及び墳墓等全く不明にして五里霧中に葬らるるのみ。

 


【2014年6月9日】メモ

 2014年6月9日(月)本部町嘉津宇を踏査する(雨)。目的は嘉津宇ムラは1719年に伊豆味の古嘉津宇から現在地に移動。その故地の確認。故地に手がかりとなる拝所やカーなどの確認はできなかったが、盆地になっている古嘉津宇の撮影はオッケー。

 現在の嘉津宇の公民館へ。その前に神アサギとトゥン、その後方にウタキのイベあり。具志堅の地内に移り、明治36年に具志堅村と合併するが、戦後もとの嘉津宇となる。

 嘉津宇の公民館、神アサギ、ウルン、ウガン(イベ)、ウプヤー(上原門中)、ユレーヤー、クランモーなどの確認。ユレヤーの仲村翁とであり、話を伺う。近いうちに、衣装の件で伺うことを約束する。門の前に車を降りると「仲原さんね」と、仲村さんの方から声をかけてくれた。雨が降り出したので家で話を伺う。詳しいことは、改めてということで短い時間。

 ユレーヤーの前の祠を見せてもらった。『沖縄県国頭郡志』に「按司位牌二個を祀り霊前床上に古櫃一個ありて」とある按司位牌は、この二つと見られる。「古櫃一個」は前の祠から家の中に移し、衣装を入れてあるとのことことであった。それは改めて拝見させていただくことに。

  
   
▲嘉津宇区公民館               ▲神アサギとトゥン                ▲ウタキのイベ

  
    
 ▲ユレーヤー前の祠内             ▲二つの按司位牌

 
▲嘉津宇の故地とみられる伊豆味の古嘉津宇             ▲天底の故地と見られる伊豆味の内原一帯