今帰仁村天底のアブシバレー
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2003年に天底のアブシバレーの調査を行っている。他にサーザーウェーやタキヌウガンの調査も行っている。当時から神行事を流れで見ていくことにしている。その後、何が残り、何が変貌し、何が省略されたのか。もう調査することはないが、その後の調査記録と比べていくとことで、その記録が歴史史料として扱うことができることに気づかされる。
2003.5.13(火)調査メモ
午前中会合。午後からも来客が続きヘトヘトなり。今日も更新できず。カウントも000001のままなり。ごめんなさい。訪ねてきてくれた方々。開き直って笑うしかありませへん。・・・ネットさん。利用者から怒られぱなっしかもしれませんが。頑張って!ハハハハ
明日は午前中「教頭研」あり。中身とコースはこれから思案するなり。その前に明日は旧暦4月14日でアブシ(ムシ)バレーの日。15日のところもある。字(ムラ)によってはタキノウガン(嶽の御願)をする。天底が14日にタキヌウガンをするので説明をして欲しいとの依頼が先日あり。少し整理して臨むことにする(『今帰仁村史』参照)。以下の予備知識を頭にいれて臨むが、できるだけ天底の方々から教えを請うことにする。
〔天底のアブシバレー〕と〔タキヌウガン〕
天底のアブシバレーは旧暦の4月14日か15日に行われる。タキヌウガンは亥(ゐ)の日に行われていたようだ。今年の旧暦4月14日がゐの日にあたるため、ムシバレーとタキヌウガンをまとめたのかもしれない。天底からタキヌウガンだからと連絡があったのでゐの日だから、今年はアブシバレーとタキヌウガンを一緒にやる形なのかもしれない。かつてはムラ人達にとって休息日でもあった。
〔天底のアブシバレー〕
アブシバレーが行われる旧暦の4月5月は稲の結実のころである。本来アブシバレーは田の草を除き、畦の草を刈り、虫(特にイナゴ)を駆除し豊作を祈願する祭祀であったであろう。古宇利島(今でも行っている)や今泊などでは害虫を集めて海に流す行事があった。
その日はインジュミをつくったという。インジュミは大麦を煎って石臼で粉にし、それに黒糖を混ぜ、おわんや皿などに入れてユシン木の葉をサジがわりにして食べたという。アブシバレーの日にはマーパラセー(馬走らし)があり、会場は仲原馬場・天底馬場・親泊馬場がる。相撲もやったようだ。マーウイの会場では俄か店ができ、
・雑炊飯(ジューシーメー)
・カーカシドーフ(乾燥豆腐・焼き豆腐)
・クルアミグァー(黒飴小)
・シルアミグァー(白飴小)
・松葉菓子(松葉の形をした焼き菓子)
・グンジューピャーガー(一厘菓子)
のようなものがでたという。(インジュミや雑炊飯はわかるが、他のものは知りません)
食べ物の他に、つぎのようなものが売られたという。
・指輪
・ベル
・オージナ(扇子)
〔天底のタキヌウガン〕
このタキヌウガンに天底の多くの方々が参加するという。天底の神アサギに集まり、神アサギの中に神人が座り、アサギに向って右側の一段下がったところに男衆、左側に女性が座る。
現在は区長がムラの行政の報告をし、持参した重箱のご馳走を食べながら昔話や世間話をする場になっているようだ。
さあ、あすの天底のタキヌウガンがどう行われているか。楽しみじゃ。
2003.5.14(水)調査メモ
天底のアブシバレー
午前中は村内の教頭先生方の研修会があった。いつもご苦労をなさっているので、パッと天底のタキヌウガンの会場へ案内。普段、板ばさみの教頭先生方ですから気晴らしをかねて!(とは言っても、中身のある総合学習の研修でしたよ)
午後2時から天底(アメソコ)のタキヌウガン(アブシバレー)に参加してきた。二時に村の人たち(約30名)が神アサギの庭に集まってきた。今日のタキヌウガンの参与観察記録を簡単に報告する。(新城さんと松田さんから、いろいろとご教示いただいた。それは本報告に収録する予定)。ターガミ(田神)はシチャウガンでした。
村の人たちが揃うと、まず根神屋(ニガミヤー)に向う。今日ウガン(御願=祈り)をしているのは新城栄一さん。供え物は区長と書記さんが手伝う。
①神アサギ
村の人たちが午後2時に神アサギに集まる。
②ニガミヤー(根神屋)
根神屋の祠にはいてウガンをするのは新城さん。線香(平線香)に火をつけたり、泡盛と神酒(ミチ)とお米を供える準備をするのは区長と書記。参加者の数の線香に火をつけると村人に一本づつ渡し、また集めて祠の中の新城さんが火神の前の香炉に線香を立てる。合図をするとみんなで手を合わせてウガン(祈り)をする。前方に女性、後方に男性が座って祈りをする。ニガミヤーが済むとヌルドゥンチの祠へ。
③ヌルドゥンチ
ヌルドゥンチは、かつて天底ノロの住宅。供え物はニガミヤーと同じように線香・泡盛・神酒・お米である。区長が線香に火を付けてみんなに一本づつ配り、再びあつめて祠の中の新城さんが四ヶ所の香炉に分けて立てる。手を合わせてウガンをする合図をすると参加者も手を合わせる。ニガミヤーやヌルドゥンチでの神酒のウサンデーはなかった。ヌルドゥンチでのウガンが済むと御嶽(ウタキ)へ。
④ウタキ(ウイウガンともいう。オミヤ)
ウタキは森になっていて、頂上部のイベまで綺麗に草刈がなされていた。ウタキの中の途中から神人を掌っている新城さんと区長、そして女性の参加者が階段を登ってイビの祠まで。男性はウタキの途中まで行き、そこでウガンをする。そこから奥は男子禁制の場として入ることを慎む。イベの祠からウガンの合図があると下の方で待機している男性たちも手を合わせてウガンをする。
⑤シチャウガン
アミスガーの近くの森。ウタキのウイウガン(上のウタキ)に対してシチャウガン(下のウタキ)という。そこはターガミ(田神)でない。その森の中にコンクリートの祠がある。そこでも他の拝所と同様、線香・泡盛・神酒・米が供えられる。そこでのウガンが終ると神アサギに戻る。
⑥神アサギ
神アサギのナー(庭:広場)にゴザが敷かれ、そこで車座になって飲みもの(ビール・お茶など)・オードブルが出される。かつては重箱にご馳走をつめ、区長の報告のあと談笑しながら飲んだり食べたりする。今日のウガンが通ったのかポツリポツリの雨になりかけたので神アサギから公民館に移動(私はそこで退散するなり)。
(神アサギで天底のアブシバレーとタキヌウガンを中心に説明をする)

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①神アサギに集まり出発 ②根神屋で線香に火をつける

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③根神屋に向ってウガンをする ④ヌルヤーの祠に向ってウガンをする

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④ウタキに向って進む ⑤ウタキの中程でウガンをする男性たち

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⑥シチャウガンでのウガン ⑦神アサギでご馳走を前に談笑をする